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No.4 音響技師のヒエルト・ドゥ=デーケンさんにインタビュー
(後編)

前回に引き続き、王立モネ劇場で、裏方の「音響技師」というお仕事をされているヒエルト・ドゥ=デーケンさんのインタビュー後編です。

今回はモネ以外でのお仕事やお仕事の面白い所、趣味の話などをお伺いしました!


神田:モネ以外では何をされていますか?

ヒエルト:お茶を飲んでます(笑)。色んな計画があります。CDを作ったり。ビッグバンドのサウンドエンジニアをやったり、シナモンという友人のポップグループのサウンドエンジニアをやったり。民族音楽フェスタを毎夏やっています。他に音楽を書いている人がいて、その録音をしたり。

奥様:演劇もやってるでしょ。

ヒエルト:そうですね。学校の演劇の音響をしたりしています。ウェイネヘムというオランダ語圏ですね。初めて行った時は、英語の授業の一環で生徒達は英語劇をやるんです。後はオランダ語の授業の一環とか。とても良い事ですね。若い子達が仲間と一緒に何かを作り上げる事を学ぶのは良い事だと思います。

奥様:モネの前は、ロックンロールもしてたのよね。

ヒエルト:そうです。モネの前はロックンロールもしてました。夏の間とか。衛星でアメリカと繋げたり・・・

神田:ロックンロールとクラシックでは随分違うでしょう。スピーカーやマイクをかなり使いますよね?何が違いますか?

ヒエルト:ロックンロールは技術が全く違います。ロックンロールは音楽を作り上げる為に音響が必要になります。ミュージシャンは、もっている楽器を弾きますが、効果を上げるために音響が必要になんです。音響が入ることで完成します。クラシックは音響自体を控えます。野外演奏の場合などは音響を使いますが、どちらかというと元々の音に近いようにしますから、再現とでもいいましょうか。なので使う技術が全く違ってきます。

神田:録音の難しい所は何ですか?


ヒエルト:うーーーーん。ミュージシャンと一緒に働く事かな。

奥様&神田:笑!

ヒエルト:音響技術は最初は難しいけどそのうち覚えて行きます。一番大事なのは、聴く耳を持つ事です。例えば低音が好きだからって、低音ばかり付け加えてしまっても良くない。聴く耳がないと難しいです。音楽家と一緒に仕事するのが一番難しい。というのも、彼らは彼らが欲しい音をどういう風に説明して良いか分からないんです。例えば、「もっと輝かしい音が欲しい。もっと存在感がある音でもっと遠くの方から聞こえるようにしたい。」と言う。でも存在感があって遠くっていうのは、ほぼ反対の事で、よく意味がわからないのです。だから、彼らの言いたい事を理解するのが大変だったりします。

神田:そうですか。ミュージシャン(音楽家)はあまり理論的じゃないからな~。(笑)

ヒエルトさん:あ、違いますよ。言葉の問題というか、彼らは録音のテクニックも用語も知らないから上手く説明出来ないんですよ。それに仕事の時は常にストレスがありますから。

神田:なるほどね。確かに。

ヒエルトさん:ロックンロールの人達は例えば初めて一緒に仕事する時などは、「このエンジニアは本当に出来るのか?」っていう疑いをかけられます。音響が失敗すればコンサートの結果がとても悪くなってしまうから、彼らはすごくストレスを感じているんですね。

神田:ロックンロールだけじゃないですよね。クラシックの人もイライラしたり、緊迫感があったりするんじゃないですか?

ヒエルト:うーん。クラシックは音響に頼る所は少ないからコンサートの時はそんな事ないですね。ロックンロールはとにかく音響がもたらす結果が大きくなるから。

神田:あぁなるほど。クラシックの人は、「うわー、弾けない!!」って自分にイライラするのかな。

一同:そうそう(笑)

ヒエルト:モネなんかの場合だと、時々指揮者がイライラしたり、緊張したりしてますけどね。大野さんはそんな事なかったですよ。あと演出家もイライラしてますね。劇場や音響の関係で、色々出来る事に限界があるので、彼らがやりたい事が出来なかったりするんです。だから「こんなのじゃダメだ!」って言ったりしてますね。

神田:俳句の世界ですね。

ヒエルト:HAIKUとはなんですか。

神田:五七五で、詩を作らなくちゃいけないんです。この最小の音の中で、美しい詩を作らなくちゃならない。勝手に五九七とかにしては駄目なんです。定められた条件の中で作らなくちゃならないんです。こういう美観は好きなんですが。

ヒエルト:うん。演出家などがそうですね。あれしたい、これしたいなんて言うけど「いやいや予算がね…」っていう事もあるし。沢山リハーサルを重ねた後で、やっぱり変えたいなんて事もあるけど、実際変えたからって良くならない事もしばしば。まぁ彼らは、色々探しているんでしょうね。

神田:録音の楽しい所は何ですか?

ヒエルト:そうですね・・・・・沢山仕事がある時かな(笑)

神田:沢山お金が入ってくる!(笑)

ヒエルト:うーん・・・。例えば音楽が素晴らしい時はやっぱり楽しいですね。後は(舞台の間に)沢山音響の仕事がある時とか。

奥様:沢山押すボタンがある時ね。

ヒエルト:そうなんです。沢山ボタンを押す時は楽しい(笑)。ミキシングする時とかね。去年は、Cirque Royalでモネ劇場が演奏した事があって。その時は会場の関係でオーケストラがちっとも綺麗にならなかったので音響を入れたのですが、そういうのはとても楽しかったです。録音も面白いです。ただ時々疲れますね。音楽家があんまり良くないと、何度も何度もやり直さなくてはならないし。でもいつでも挑戦する事は良い事ですね。

神田:もし録音の後に音楽家が「ここのこの音を変えたい!」って何度も来たら、鬱陶しいですか?

ヒエルト:いえいえ!楽しいですよ。でも「変えたい!」って言われても、それ以上に良い演奏の録音がなかったら変えようがないですからね(笑)。でも時々こだわるのが遅過ぎる人はいますね。録音の時は、「OK!」なんて言って帰っていくのに、いざ編集の段階になると、「これが良くない、あそこが良くない」って言う。まず録音する段階で拘らないとね(笑)。まずは家で沢山練習して来て下さいって言うんです(笑)。一度はロックのグループの録音の時に、スタジオ入りしてからグループ内で「ギターがダメだ」「ベースがダメだ」って言い出して。困りました(笑)。

神田:趣味でオーボエを吹いているようですが、他にどんな事をしていますか?

ヒエルト:ハーモニカ吹いたり。。。後編曲をアカデミー(公立の音楽教室)で習いました。だから自分が吹いてる吹奏楽のために編曲をしたりしています。すごく時間がかかります(笑)。

神田:オーボエ奏者になりたいと思った事はありますか?


ヒエルト:うーん。一瞬考えた事があります。でも、コンセルバトワールに行くからには毎日沢山練習しなくちゃいけない。 僕は自分の事をよく知っていますから、アカデミーの時でさえちゃんと練習していなかったから(笑)、無理だなって。

神田:うーん。そうですね。オーボエのプロはかなり道が少ないですね。オーボエを個人的に習いたいっていう子は少ないから教えるのでも仕事はあまりないし。オーケストラって言っても大して席はないし、アンサンブルもそんなにオーボエってないし。

ヒエルト:そうですね。ちょっと先生に話してみたら、「映画の学校(音響)を終えたら、やってみたければやってみたら?」って言われたけど、やっぱりいいやって(笑)でも、今の仕事が好きなので後悔はないです。

神田:なるほど。今日は有難うございました。

ヒエルト・ドゥ・デーケン(Geert De Deken)
ベルギー王立モネ劇場の音響技師。オーディオヴィジュアル・サイエンスを学んだ後、モネ劇場に務める以前にはミュージカル・コメディ、演劇、遠隔会議、ロックンロールの分野で仕事をしていた。同時に、フリーの技術者としても仕事をしているほか、ブレンヌ・ラルーの吹奏楽団(la SRH de Braine-l'Alleud)で趣味でオーボエを吹いている。www.geertdedeken.webs.com


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神田望美 (かんだ のぞみ):ベルギーを中心に演奏活動を繰り広げているフルーティスト。 日本、西欧諸国、ノルウェー、チュニジアの音楽祭、コンサートにも出演し、各国の新聞にて好評を得る。 室内楽を主に多くの音楽家と活動する一方、フルートアンサンブル4Tempi のメンバーとして活躍。故西沢幸彦氏の影響を強く受け、新境地の開拓を目指し、邦楽器、語り、日本の音楽をプログラムに取り入れるなどの試みをしている。ブリュッセル王立音楽院フルート科教職課程を修了し、ベルギー公立のアカデミーの代理講師、Dinant International summer academieにて指導。Atelier de Fluteを立ち上げ指導を行う。日本でもセミナーや吹奏楽部指導などを定期的に行っている。これまでに高橋あかね、植村泰一、西沢幸彦、マルク・グローウェルス氏に師事、ヴァンサン・リュカ、ヴァンサン・コルトブリントらのセミナーに参加。 フェリス女学院大学音楽学部、王立モンス音楽院卒。公式HPブログも絶賛更新中!


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