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連載:人ありき
作り手から“美味しさ”の秘密お届けします。                       【2012-5-17】
No.4 レストランの醍醐味 ③


今回のレストランの醍醐味、その3では少し厨房を離れお料理とワインについてお話を進めて行きたいと思います。

ご協力してくださったのはルイーズ通りに程近いフレンチレストラン、Flaneries Gourmandes〈フラーヌリー・グルモンドュ〉のオーナーシェフ、Alex MALAISE(アレックス・マレーズさん、上写真一番右)とメートル・ド・テル(客席全般の責任者)を務めるAlexandre MOREAU(アレクサンドル・モローさん、上写真左から2番目)です。今年の6月で7年目を迎えようとしているフラーヌリー・グルモンドュですが、今までの道のりを想い出すと感慨深い気持ちになってしまいます。

何故かと言うとここは私が以前、シェフ・パティシエとして働いていたお店で、オープン前の物件の下見の段階からお手伝いした思い出深いレストランです。

実はこのお店、窓ガラスや名刺にも、店名「Flaneries Gourmandes の下にしっかりと「ON RESTE POUR LE DESSERTと書かれています。これは食事の後のお楽しみとでも言いましょうか、最後のデザートも忘れずに楽しんでいただけますよと、デザートに力を入れていることをアピールしているものです。

私達がレストランに行く第一の目的は、やはりお料理を食べること。 そして当然、お料理と一緒にワインなどを飲みます。お料理+ワインでお料理の味を引き上げ、幸せ気分は膨らみ話も弾むというゴールデンルールのようなものが出来上がります。 《ここではレストラン・ガストロノミックを対象にお話させて頂いています》

アレックスさんにとってレストラン空間とは何ですかという質問をしてみたところ、「お料理50%、ワインやサービスなどその他が50%、合わせて100%になるのが理想的です」とお話してくれました。こういったタイプのレストランはやはりソムリエやメートル・ド・テルを必ず雇い、ワインサービスなどにも力を入れて充実させています。

皆さんはレストランでのワイン選び、どうされていますか。
ご自分で、それともソムリエの方にお任せ?どちらでしょうか。

このお店ではソムリエも兼任しているアレクサンドルさん。以前パリの星付きホテルのプラザ・アテネで長年お仕事されていました。彼のコーディネートするワインリストについてお伺いしました。

レストランでのワイン選びについてお客様はいつもどうされていますかとお聞きしたところ、「95%以上の方がお料理に合わせたワインを私にお任せして頼まれます。」と答えられました。

フランス料理の現場ではお料理とワインの「マリアージュ」を大変重要視しています。つまり、お料理とワインがお互いを引き立て合う関係を見出すことによって、お料理の味をより一層高めるだけでなく、ワインの味さえも再発見できるような組み合わせをお客様に提案できるよう最善を尽くしています。

フランス料理は日々進化し続けていて、取り入れる素材も驚くほど豊富になってきています。「お肉には赤ワイン、お魚には白ワイン」と広く認識されていますが、その一歩先に踏み出せるような未知の味覚体験、想像を超えるような料理とワインのマリアージュを体験するにはソムリエにワインをセレクトしてもらうのが最善ではないかなと思います。

アレクサンドルさんがこんな話をして下さいました。あるワイン好きの常連のお客様が、その日もいつもの様にお料理に合わせるワインをアレクサンドルさんに頼まれたそうです。彼が選んだワインをお出しすると、試飲の段階でお客様は「このワインは余り好きではない」と、正直な気持ちをアレクサンドルさんにお話されたのです。しかしこのワイン、君を信じてお料理と合わせて飲んでみたいと思いますと言われ・・・お料理がテーブルに運ばれました。その後お客様は、「不思議だ、このワインはお料理と良く合っていて、お料理と一緒に味わうと、とても美味しく感じられるやっぱり君にお任せして良かった」と大変喜んで話されたそうです。

そこで今日は私もお料理に合わせたワインを選んで頂きました。お料理は帆立のグリエ、ラングスティーヌ(手長えび)、白ランティーユ(白レンズ豆)のサラダと季節の野菜添えです。それに合わせていただいたのが、こちらの白ワインです。

(ワイン名)  Lard des Choix 2010  
(生産地)   フランスのコート・ドュ・ローヌ地方
(ぶどう品種) Roussane-Marssane
(農園)    Les champslibres
(アルコール度)13.5%

まずはワインの香りを~、青りんごです。さわやかな青りんごの香りがする、のどごし優しい白ワイン、しっかりアフターも感じられます。この香りで気持ちまでリフレッシュされる様です。

おもしろいですね。帆立のお料理にはシコンと青りんご、くるみなどのサラダが添えられたりする事が多いのですが、なるほど!青りんごを感じさせるこのワインは見事に帆立とマリアージュしています。軽めのオードブルにぴったりのこのワイン美味しかったです。

このレストランのワインリストに載せられているワインは、全てVin nature(ヴァン・ナチュール)、或いは「ビオディナミ(Bio Dynamiques)」と呼ばれているものです。無農薬有機農法の葡萄を使い自然醸造で造られたもので、通常ワイン醸造段階で必要な酸化防止剤(亜硫酸塩)も使用されていません。 Vin natureには、ローマ時代から受け継がれている方法も有り、今もこの様な伝統的な作り方を行っているところが有ります。

こちらの赤ワインは、そのローマ製法で造られたものだそうです。

(ワイン名)  Nero di lupo  2008  
(生産地)   イタリアのシシリア地方
(ぶどう品種)  nero davola
(農園)     Azienda cos
(アルコール度)12%

陶器の(壷?)樽に入れて土に埋めてワインを醸造させるのだそうです。 この様な自然醸造で造られたワインは全て早飲みタイプ。数十年も寝かせて飲む重厚な熟成タイプとは違い、ぶどう本来の個性を楽しんで気軽に飲めるワインと言えます。このワインは決して悪酔いなどしない体に優しいワインだそうです。

アレックスさんの作るお料理を熟知していらっしゃるアレクサンドルさんが選ぶワインの基準をお伺いすると、「飲んだ後のアフター(余韻)を感じるワインというのはもちろんの事、一口飲んだ時にまるで巨匠たちの作品で埋め尽くされたパリの美術館に足を踏み入れた時のような驚きが感じられないといけない。そして、大切なのはワインがお料理以上でも以下でもあってもいけない、お料理とのバランスが取れたものを考慮して選んでいます。」と話されました。

そうですね。ここはレストランですからお料理とワインのバランス、延いては料理人とソムリエさんの良いバランス感が大切なのだと思います。彼曰く、厨房とサービスする側が十分にコミュニケーションを取り良い関係を築いている場合は、それが自然と客席にまで伝わるのだそうです。

今日も5種類ほどワインの試飲をさせて頂きましたが、どのワインも熟成年度が浅い(若いワイン)にもかかわらず硬さがなく飲み頃を感じる柔らかさが有りました。香りでご説明するならば、栗の木を想わせる木香系(樽香が香る、マロンのデザートに合わせていただきたい一本)だったり、プラムの香りがするドライフルーツ系(こちらはモロッコ産でクスクス料理に合わせても面白いだろうなと思う)だったり、果物のレイチのさわやかな香りがするフルーティー系だったり(魚介類とどうぞ)、イタリアワインでかつお節の香りがする燻香系とでも言ったら良いのでしょうか、思わず和素材を連想させるとても面白いものもありました。

気になるワインのお値段ですが、年齢の開きの有る客層に合わせて23ユーロ~90ユーロぐらいのものが取り揃えられていて、お客様のニーズに合わせてコーディネイトされているそうです。

「23ユーロのワインでもとっても美味しいから心配しないでね」と笑顔で話されていました。※こちらのワインリストは解り易い様にとぶどう品種別に分けて書かれています。 

フラーヌリー・グルモンドュでは、「お客様を自分の家にお招きした様なアットホームな感じでお迎えしたいと心がけている」そうです。 「勿論、お友達ではなくお客様ですからちゃんと良い距離を保ちながらいつも接客するように気を付けています。」とも。サービスに長年携わってこられた方のさりげない気くばりが感じられました。

アレックスさんは、お店にお伺いするたびに、忙しい仕込み中であれ丁寧にお茶を淹れて下さる、おもてなしの心を持った優しい方です。そんな彼も、いつもお店に足を運んで下さるお客様を飽きさせる事のないようにと新しい素材、技法を取り入れ、日々工夫をされてお料理を作っていらっしゃいます。そして、柔軟な発想、失敗を恐れないチャレンジ精神、仕事に対する愛情と喜びを持ち続けるアレックス、今後はどんな斬新なアイデアや素晴らしい料理で私達を楽しませてくれるのでしょうか。

そんな彼がお迎えするフラーヌリー・グルモンドュは、ほっとした気分でお食事したい時にぴったりのレストランです。  

今旬の(ホワイト)アスパラガス、只今こちらのレストランでは、アスパラガスを使ったデザートが食べられます。アスパラガスにフランボワーズが良いアクセントとなり、ちゃんとしたデザートに仕上げています。ミントが最後にほのかに香るエレガントな一品です。今日このデザートにも Poussiére de Lune、フランスの白ワインを合わせていただきました。貴腐葡萄の香りがするさわやかな香りとすっきりした甘さで、アスパラガスと一緒に合わせているせいか、最後まで美味しく飲み干せました。※この様にこちらでは、デザートに合うワインもご用意していますので、お試し下さい

今年ベルギーでは、Année de la gastronomie 美食の年を掲げ各地で食のイベントが開催されています。私も是非会場に赴き、ヨーロッパのみならず多国籍の食文化に触れ食に対する想いを一層深めてゆきたいと思っています。(皆さんもいかがですか?)

今回の連載ではご紹介出来なかった若き料理人さんやソムリエの卵さん達、真剣な眼差しで仕事に取り組んでいる姿を見て思わず感動してしまいました。皆さんに心から感謝します。そして、今後のご活躍を楽しみに陰ながら応援出来ればと思っています。

最後に私自身も、皆で食卓を囲み、素材に込められた沢山の想いを感じながら、食を通して語り合いの場を深め幸せを分かち合う“空間”をつくっていけるよう今後も日々邁進していかねばと鼓舞させられるような、そんな(心まで満たされる)午後のひと時を過ごさせて頂きました。


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小野島ゆかり 【著者: 小野島 ゆかり、パティシエール】
日本の菓子屋で修行をし、ホテルのパティスリー立ち上げからシェフを経験後、1997年に渡白。ブルッセル市内の菓子屋に従事。その後、結婚・出産を経て2002年よりフレンチレストランでパティシエールとして活躍。2009年末、新たなステージを目指してレストランを退職。現在はお菓子教室を開催しながら次のステップの為の充電中。得意なお菓子は、季節の果物を使ったデザート風アントルメ。愛知県名古屋市内の「”Le chapon fin” Les entremets Français」の野畑氏を師匠に持つ。

(ベル通でのインタビュー記事はこちらからご覧ください。)

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