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No. 6 ゴールデンストロングエール!というより、ずばりデュベル!
ジュピレーやヒューガルデンに並んで、ベルギーのどこのビアカフェやスーパーでも扱われ、また、最近では、日本のベルギービール扱い店でもよく見かけるようになったDuvel(日本語表記では、『デュベル』として売られていますが、Vなので、日本以外にいる方はデュヴェルと発音した方がよいかと思うので、ここではDuvelとしておきましょう。)

いったいどのカテゴリーに入るのだろう、と思っている方も多いかと思います。ビール評論家としてベルギービールを世界に知らしめた、故M・ジャクソン氏によれば、Duvelは、第一次世界大戦直後の20世紀始めに導入され、単品でひとつのカテゴリーを築いた優れもの。そのカテゴリーは、「ゴールデン・エール」とか「ゴールデン・ストロング・エール」などと呼ばれ、アルコール度数が8~9%と高めながら、爽快で、複雑な味わいと香りを併せ持ち、他のカテゴリーに入りきらない深い黄金色のビールがここに入ります。柳の下の二匹目、三匹目のどじょうを狙おうと追従する商品が続けて開発され、カテゴリーは賑やかになりましたが、今でも、Duvelはこのカテゴリーではダントツの一番人気、堂々の4番バッターです。

Duvelとは、古いオランダ語の地方方言で、「悪魔」の意味。『世界一魔性を秘めたビール』と呼ばれるほど、飲みやすく、爽快感があり、それでいて奥行きの深い味わいと香り。ついごくごく2~3本飲むうちに、すっかり酔ってしまって立てなくなってしまうような、「悪魔のように魅惑的なビール」です。なるほど…この説明は、Duvel好きなら確かに納得してしまうのですが、実は、この名は、開発当初、このビールを試飲した地元の靴屋のおっちゃんが、「まさに悪魔みてえなビールだ!」と絶賛したことによるもの、と言われています。

さて、Duvelは、その透明で輝きのある黄金色と、8.5%というアルコール度数をまったく感じさせない旨さが特徴。ラガーピルスを飲みなれた世のビール好きには馴染みやすいビールなので、一見、ちょっとアルコール度が高いだけのラガーピルスと思ってしまいがちですが、実は、ベルギースペシャルビールの中の逸品。もちろん、上面発酵・瓶内二次発酵ビールですが、煮沸の間に、ホップを3回に分けて入れ、発酵のために2種類の異なる酵母を使いわけるこだわり。その後、一次発酵、二次発酵、熟成、暖かい倉庫での瓶内二次発酵、冷たい倉庫での熟成に、充分な時間と手間隙をかけ、出荷されるまでになんと3ヶ月。Moortgat一族2代目のアルベールが、第一次世界大戦直後、英国風エールを学びに出かけて開発したレシピは、たった2~3週間でできてしまう、その辺のラガーピルスとは美味しさの理由が違います。ブリュッセルとアントワープを結ぶ産業道路A12のちょうど中間あたりに位置するDuvel Moortgat社の倉庫の壁面には、「シ~ッ!静かに! 今、ここでDuvelが熟成しているんだから!」と書かれているので、今度ここを通るときは気をつけて見て下さい。

グラスにもこだわりがあります。単純な聖杯型やチューリップ型と一味違う、くびれ部分が長く、軸の短い独特の存在感あるチューリップグラスはDuvelの専売特許。ベルギービールは、泡立ちの良さ、きめ細かさ、しっかりした泡持ちも重要な評価基準となるのですが、Duvelの泡は優等生。このグラスは、見とれるほど美しい泡をグラスの指三本分以上作づように注ぐために造られたフォルム。ビールが酸素との接触するのを防ぎ、美味しさを封じ込めておいてくれるのです。また、Duvelを注ぐと、グラスの底から、一筋のバブルがキラキラといつまでも立ち昇っているのに気づいた方はいませんか? 実は、Duvelのグラスの底には、Duvelの頭文字Dが刻まれており、注いだ後も、わずかな泡が立ち続けて、ビールを美味しく守ってくれているのです。次回、Duvelを頼む時は、グラスの底をよーく覗いてみてください。

Duvelをここまで誉めそやすのは、ビールが優れている点も去ることながら、ベルギーの醸造界の中で、今日のDuvel Moortgatという企業がずば抜けて素晴らしく、それを牽引する若手経営陣がビール醸造界のエースとも言えるから。創業は19世紀後半と古く、現在の4代目Moortgat兄弟が継承するまでは、普通の地方の同属経営醸造所で、家族内の揉め事も多々あったようですが、ビジネススクール出身の4代目ミッシェルを中心とするモルトガット3兄弟に引き継がれてからは、「伝統のレシピを、最先端技術で」をモットーに、醸造設備に投資し、経営を刷新。ベルギーのビール醸造所としては始めて、株式を上場し、HACCP(食品製造工程の国際規格)認証を受けています。輸出市場でも堅調で、ベルギービール全体の輸出をひっぱるリーダー格。基幹商品Duvelがあくまで中心ではありますが、アベイビールのMaredsous(マレツ)、白ビールやピルスナーのVedett(ヴデット)のほか、ここ数年で、南部アルデンヌ地方の典型的クラフトビールLa Chouffe、フランダース西部の伝統的フルーツビールLiefmans、アントワープの伝統的地ビールDe Koninckなどを傘下に入れ、いくつものカテゴリーのビールを併せ持つ複合ビールグループ企業として、躍進を続けているのです。

ベルギーでは、ここ20年ほどの間に、皆さんご存知のAB Inbev(米国のアンハイザーブッシュを買収して醸造量世界一の醸造グループとなっているベルギー企業)を筆頭に、大手の醸造所が、経営困難に陥っている伝統銘柄や小規模醸造所を買収することが盛んに行われてきました。しかし、それらは旧経営者や働く人々の意思をないがしろにした乱暴な買収・合理化であったり、短期的な財務利益だけのためでることが多く、社会的な不満反発を買ったのですが、そんな中、Duvel Moortgat社のやり方は誠実で建設的。傘下に入った醸造所も、買った側のDuvel Moortgatも、双方Win-Winのハッピーな発展に至っているのです。Duvel Moortgat社はその他、経営陣が率先して、芸術・音楽・スポーツ分野でのスポンサーシップ、慈善事業への寄付、「ビールと健康」テーマへのイベントやリサーチへの参画などに積極的なことでも有名。ビール業界、ベルギーの製造業業界でモデル的な伝統製造業として注目されています。

さて、Duvelと同社のPR記事のようになってしまったので、皆さんもファンになってしまったでしょうか? Duvelには最近、Duvel Tripel Hopという限定シリーズが加わりました。これは、3回目に加えるホップを、毎年異なる種類を選んで醸造するという新企画です。今年のTripel Hop試してみましたか?

今日、同カテゴリーには、多くの銘柄が乱立しており、それぞれ独特の美味しいビールではありますが、全国銘柄、輸出銘柄となっているものはごくわずか。その中で、健闘しているいくつかの銘柄をご紹介します。Duvel(悪魔)の対抗馬らしく、ユダ(キリストを裏切った使徒)、ギロチン(締死刑台)、サタン(悪魔)などの怖そうなネーミングが多いので、この手の名前を見たら、ゴールデンエールかな?と思ってもよいかもしれません。

Delirium Tremens(Huyghe醸造所)
http://www.delirium.be/
デリリウム・トレレンス、つまり、「アルコール中毒による禁断症状」という、勇気ある命名。アルコール度数8.5%。ピンクの像がアイコン。同醸造所の看板ブランドであり、ピンク像愛飲クラブともいえるファンクラブがあります。このビールのラベル、実はよく見ると、ピンク像以外にも、緑のワニ、ドラゴン、金色の鳥となんだか不思議なものがいっぱい…これは、このラベルをデザインした当時のバイト学生君の説明によれば、「アル中が進むと、この順番に幻覚が見えるから」なのだとか。Delirium Café という名前の2000種以上ものビールを取り揃えたビアカフェが、ブリュッセル中心のIlot Sacret地区にあり、最近では東京にいくつかの支店も登場しているので、ご存知な方も多いことでしょう。社長Alain氏は、面白真面目な青年実業家。ベルギービール醸造家組合でも「騎士の会」をリードする立役者。今年は、フランダースを代表する輸出優良企業に選ばれそうです。なお、同じくHuyghe(ヒューグ)醸造所によるGuillotin(ギロチン)も同じカテゴリーのビールと言えます。

Judas(Alken-Maes社傘下のAlken醸造所)
http://www.alken-maes.be/fr/getpage.asp?i=1
ベルギーフランダース地方東部リンブルグ州にあるアルケン醸造所は、早くも80年代から大手に買収され、何度も所有社が変遷し、現在は、ハイネケングループ。Judasとは、日本語のキリスト教聖書ではユダと訳されている、最後の晩餐でキリストを裏切ったとされる使徒の名前で、なかなかアクの強いネーミング。オレンジ色がかったゴールドで、フルーティでスパイスの利いた、フルボディのビール。アルコール度数8.5%。

Brigand(Van Honsebrouck醸造所)
http://www.vanhonsebrouck.be/
Van Honsebrouck(ヴァン・ホンセブルック)醸造所は、フランダース地域の西部ルーセラーレ付近にあり、かつてフランデレン公爵が建てたとされる美しい城を本拠地として、その名の通り、Kasteel(城)というビールを造る醸造所です。Brigand(ブリガン)とは、フランス語で、山賊、追いはぎなどの意味で、やはりちょっと恐ろしいイメージの命名です。ゴールデンエールに含めるには、やや赤みがかった琥珀色で、この地域に昔から伝わるレッドレールやブラウンエールの影響を受けていると言えます。アルコール度数9%。

他に、Hapkin(Alken-Maes社), Lucifer(Het Anker醸造所), Deugniet (Du Bocq醸造所), Satan Gold (De Block醸造所)などがあります。

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著者:栗田路子(くりた みちこ)
神奈川県生まれ。上智大学卒業後、外資系広告代理店勤務。米国コーネル大学およびベルギー・ルーヴァン大学にてMBA(経営学修士)取得。90年代始めから、ベルギービールの日本向け輸出・マーケティングに従事してきたが、2007年4月、セミ・リタイヤ宣言。現在は、寄稿や執筆、日本のメディアのためのリサーチやコーディネートなどを請け負っている。ベルギービールの他、教育、医療、障害児など、守備範囲は広い。 ベルギー在住。2010年にベルギービール騎士の会の「名誉騎士」に任命される。夫とともに㈱マルチライン経営の他、コーディネータースクラブ・ベルギーを運営。障害孤児の養子縁組を支援するチャリティ「ネロとパトラッシュ基金」運営。 障害を持つ子供と供に赴任する日本人駐在員をサポートする「元気ママの会」主催。 今までの寄稿をアップしたブログはこちらから。



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